第138章 新しい台本

灰原仁司の手にある株式譲渡契約書を見つめながら、杉浦杏奈はますます現実感を失っていた。

じゃあ、午後のあれは夢だったのだろうか。あの女の夢を見て、自分が狂ったみたいになって――。

それなら、今は。今も夢なのだろうか。

足の裏にちくりとした痛みが走る。そこでようやく彼女は布団をめくり、右足にきちんと包帯が巻かれているのを見た。傷は手当てされている。それでも、まだじんじんと痛む。

思い出す。スタンドライトを叩き割って、その破片を踏んだのだ。

「灰原仁司?」

「俺のシェービングローションをぶちまけて、そのうえガラスまで踏んだ。弁償はしてもらう」

灰原仁司は平然と嘘をついた。声にも表情...

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